早朝から多数の人々が一か所に集まった。彼らが集まった理由は他ならぬ映画鑑賞のためである。

16日から釜山(プサン)にて、アジア最大の映画祭、釜山国際映画祭(以下、BIFF)が開催された。今年は30周年を迎え、1996年の創設以来、今やアジアで最も権威ある映画祭の一つとして確固たる地位を築いている。
20日、ウィキツリーが訪れた現場は、毎朝9時から始まる巨大な祭典のため、目まぐるしいほどの忙しさに包まれていた。近年、映画館業界に低迷感が漂う中、ここの劇場は常に満席を誇る。当日の上映作品がほぼ全て完売している状況でも、キャンセルチケットを手に入れようと現地で列をなす人々が多数見受けられる。キャンセルチケットは、入手され次第即座に消えてしまう状態である。
BIFFの会場を訪れたペ・ミンギュ氏(24)は「毎年来場者が増加しているようだ。映画好きが増えるのは喜ばしいが、チケットの入手の難しさは依然として困りものである」と照れ笑いを浮かべた。
さらに彼は「『フランケンシュタイン』、『ルノワール』、『ポンヌフの恋人』など、名高い作品が楽しめるのでワクワクする。今回のBIFFでは、カンヌ国際映画祭受賞作も例年に比べ増えており、映画ファンである僕にとって非常に嬉しい知らせだ」と来場の感想を述べた。

今年はBIFFにとって30周年という特別な年であるだけに、その規模も非常に大きい。カンヌ国際映画祭のパルムドール受賞作品『シンプル・アクシデント』、シム・ウンギョン主演で韓国でも話題となったロカルノ映画祭黄の金豹賞作『旅と日々』など、出品された映画はいずれも世界的な映画祭に匹敵する水準を示している。これらは実際、20日に最も短時間で完売した作品群である。
これに加え、日本で1,000万人の観客を突破した『国宝』(イ・サンイル監督)、カンヌ国際映画祭の競争部門招待作『ルノワール』(早川千絵監督)、韓国映画『地球を守れ!』のリメイクとなるハリウッド作品『ブゴニア』(ヨルゴス・ランティモス監督)なども、多くの観客を魅了した。
さらに、『フランケンシュタイン』を演出したギレルモ・デル・トロ監督など、ハリウッドの著名な監督が直接会場を訪れ、祭典のレベルを一層高めた。現地では、トップ俳優や著名な監督と直に対面できる貴重な機会が提供されている。

現場をさらに盛り上げたもう一つの要因は、今年最高水準で用意されたグッズを求め、ショップに長蛇の列ができたことである。特に今回はラッパーBeenzinoの衣料ブランド「IAB STUDIO」とのコラボ商品も発売され、Z世代の間で大変な人気を博している。現地での購入待機列は、数分を超え、一時間以上に及ぶ場合もある。
BIFFは、単に名作映画を上映するだけでなく、多くの重要な役割を担っている。BIFFはアジア映画のハブとして、アジアの映画関係者が交流し協力する拠点となっている。今年も日本の監督である三宅唱、月川翔、日本の俳優坂口健太郎、小栗旬、そして香港の俳優トニー・レオンらが会場を訪れる。

もう一つの役割は新人発掘である。まだ世に知られていない新人監督に作品を発表する機会を提供し、新作映画を世に届ける重要なチャンネルとなっている。これは韓国の監督に限らず、オランダのスヴェン・ブレッサー監督の長編デビュー作『リードランド(Rietland)』は、午前9時30分という早朝にもかかわらず、瞬く間に完売した。
BIFFのおかげで、釜山は映画の街として広く知られるようになっている。実際、映画祭期間中は多くの国内外の観光客が釜山を訪れ、地域経済に活力をもたらしている。
釜山在住のファン・スンジェ氏(25)は「釜山市民として、BIFFの期間になると町全体に活気がみなぎり、自然と気分も高揚する。釜山市民にとって、これほどの祭りは他にない」と語った。
さらに「個人的にも同年代の新たな仲間ができるので楽しく、ボランティア応募も2,000人以上集まったと聞いている。次回はぜひ参加してみたい」と意気込みを示した。
アジア最大の映画祭であるBIFFは、26日まで釜山映画の殿堂(釜山シネマセンター)周辺で開催される。
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