インディーズ系映画一本がメジャー期待作のスポットライトをかき分けて話題をオンでいる。

これはユン・ガウン監督の新作映画『世界のジュイン』に関する話だ。
『世界のジュイン』は今月22日に韓国で公開された直後、観客からの指標と評論家の反応で同時に高い評価を得て、映画ファンの間で世界的な巨匠パク・チャヌク監督の映画『仕方ない』などを抑えて「今年の韓国映画」の候補として挙げられている。最も印象的な韓国映画として挙げられる評価が相次いでいる。数値もこの反応を裏付けている。今月24日の午後2時30分基準、韓国の映画館「CGV」によるエグジ指数は96%、韓国のポータルサイト「NAVER」に実観客評価は9.37点を記録中だ。大作中心の市場構図の中で見ることが稀な現象だ。公開3日目前後のこの程度の体感評価が出るには、観客の口コミの方向が明確でなければならない。特定のジャンルを楽しんでいるファンダムの偏りというより、学校で経験した教室の階層と多数決の圧力が働くことに近い。「インディーズ映画というジャンはが観客から選ばれにくい」という偏見を払拭する雰囲気だ。
『世界のジュイン』は高校生イ・ジュインによる一つの選択が教室と家庭、関係全般を揺るがしながら起こる一連の波紋を追っている。学級委員、模範生、人気者と呼ばれるジュインは、学校で行われた署名運動に一人だけ同意しないと宣言する。多数に依存してきた空気の中で、たった一人の脱落は即座に衝突を招く。説得と反論が言い争いに発展し、その後匿名の者から送られたメモがジュインを追い詰める。「目立ちたがり屋」、「虚言症」のような烙印が教室を漂う。映画はこの問い掛けから始まる。「イ・ジュイン、何が本当の自分なの?」

ユン監督は以前作『わたしたち』、『きっと、最後の恋』が示したミクロな観察を維持しつつ、今回は多数決の圧力と「正しさ」の強要、噂と匿名の暴力、性と愛を巡る10代の実際の悩みまでそのスペクトラムを広げた。カメラは人物を密着追跡するが、説明を省き、観客が感情の糸を自ら整理する時間を与える。誇張されたドラマティックさの代わりに、体感可能な揺らぎを蓄積する方式だ。
この作品は公開前に海外の主要映画祭で存在感を証明した。トロント国際映画祭のプラットフォーム部門、ロンドン映画祭、ワルシャワ国際映画祭、平遥(へいよう)国際映画祭に招待された。平遥国際映画祭ではロベルト・ロッセリーニ賞審査員賞と観客賞を同時に受賞した。ワルシャワ国際映画祭では国際映画批評家連盟賞を受賞した。独立芸術映画の配給が難しいかった時期に、招待した数々の映画祭のラインナップが、この作品が持つ普遍的な感受性を検証したこととも言える。
経験があまりない新人女優ソ・スビンが『世界のジュイン』の主役を担当した。学級委員としての元気さ、思春期の好奇心、多数の前で感じる震え、匿名の者から届いた質問が残す痕跡を素早く切り替えずに一呼吸で繋いだ。表情より呼吸、セリフよりもためらいが先に見える。ユン監督が言った「完全に若いエネルギーを持っている女優」という規定が過言ではない。女優チャン・ヘジンはジュインの母カン・テソン役で物語の重心を支える。過去の傷を示す過程でも過剰に押し出さなかった。争いと和解の間、家族の温度を現実の値で維持した。

ユン監督のカメラは決定的な瞬間を遠くから見守り、人物の内面が崩れる場面では距離を縮めた。教室の雑音、廊下の足音、洗車場の水流のような生活音が感情の背景音として機能する。音楽は抑制されており、感情のクライマックスでも過度に載せない。洗車場のシーンはこの映画の態度を要約する。傷を消すのではなく、埋もれていた埃を洗い流し、再び向き合う過程を示した。回復を宣言せず、回復の可能性だけを残した。
映画の焦点は二つの軸である。一つは噂と匿名、多数の同意が生み出す規範の速度だ。もう一つは性と愛を語る10代による実際の言葉だ。作品は「正直さ」という言葉の裏に隠れた暴力の可能性と、正直さが時に誰かを救う通路になるという逆説を同時に捉える。多数決の快適さと少数の不快さが、教室という小さな社会でどのように交換されるのか、観客が知っていたシーンを新たに目の当たりにすることになる。

ユン監督はパンデミック時期に「これが最後の映画かもしれない」という心情で物語を押し進めたと明かした。小さな映画が映画館で上映される難易度が高まっている中、映画祭は依然として重要な通路である。この作品はその通路を巧みに活用した。公開前に海外のラインナップを通じて韓国の映画ファンの関心を喚起し、公開週の実観客指標で市場の反応を確立させた。インディーズ映画の標準戦略として記録されるべき展開だ。
同時期の巨匠新作との比較構図は、結果ではなく現象そのものだ。ファンダムによる口コミは誇張されやすいが、ここで有効なのは数値とシーンだ。高い実観客の評価、上映中ずっと維持される感情の密度、教室の空気を再現する俳優たちによる共演という三点が観客の選択を説明している。ブロックバスター型の物語とは異なり、この映画は事件ではなく感情の因果を積み重ねる。まさにその方式が、2025年の韓国観客の疲労を回避する。
映画情報を一目でチェック
タイトル : 『世界のジュイン』
監督 : ユン・ガウン
主要出演 : ソ・スビン、チャン・ヘジン
尺 : 119分
レイティング : PG12
公開日(韓国) : 10月22日
主要受賞・招待 : トロント国際映画祭・プラットフォーム招待、平遥国際映画祭審査員賞・観客賞、ワルシャワ国際映画祭国際映画批評家連盟賞
評論家(韓国の映画専門誌「CINE21」の専門家8人)の評価(10点満点)とコメント
チョン・ジェヒョン(8点)動的に自分の物語を語る愛と真実。
イ・ユチェ(9点)幸せになるだろう。しかし、それでも消えないだろう。
イ・ジャヨン(9点)安全な無菌室に保管されるより、傷だらけの本当の私の世界にいたい。
キム・ソミ(8点)絶望の代わりに強い微笑みを得たすべての人生の 「ジュイン(主人)」 たちを撫でる。
パク・ピョンシク(7点)観察し、傾聴し、励ます。
イ・ヨンチョル(6点)克服し、飾る。
キム・チョルホン(8点)匿名のメモを受け取った後も主人であり続けるために。
キム・ソンヒ(8点)どんなに苦痛でも、私らしさは私が決める。
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