韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が非常戒厳令を宣布したが、国会は拒否の意を示し解除となった。これに対し、トニー・ブリンケン米国務長官が韓国の民主主義の強靭性を高く評価したという。
ブリンケン長官は「韓国の民主的回復力と法の支配は、世界で最も強力な実例の一つだ」と述べ、今回の事態が民主的制度の重要性を証明したものであると強調した。米政府と主要メディアは今回の事件を詳細分析し、尹大統領の政治的行動について様々な反応を示している。
ブリンケン長官は4日(現地時間)ベルギー・ブリュッセルで開催されたNATO外相会議後の記者会見で「政治的対立は、必ず平和的かつ法の支配に従って解決されるべきである」と述べた。前日にも、戒厳令解除を歓迎する意を示しては「アメリカは24時間の間、韓国の状況を注視していた」と明らかにした。
尹大統領が非常戒厳令を宣言した際、国会議長室と野党は急遽国会に集結し、非常戒厳令解除要求決議案を迅速に可決した。そのような状況の中、戒厳に反対する市民が国会に押し寄せ、尹錫悦政権を圧迫したのだ。ブリンケン長官は、このような過程を高く評価したものとみられる。
ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)報道官は「我々は、懸念されていた戒厳宣言を尹大統領が撤回し、国会の決定を尊重したことに安堵している」とし「今後の状況を引き続き注視するつもりだ」と付け加えた。NSCは、戒厳令宣布直後に「韓国政府と緊密に連絡を取っている」と発表し、事態悪化の可能性について強い懸念の意を表明した。
カート・キャンベル国務副長官も「韓国の最近の状況を深刻に捉え、注目し続けるべきだと思っている」と述べた。大阪万博でのスピーチでも「アメリカは、韓国政府と様々な面でコンタクトを取り、状況をしっかりと把握していこうと努めている」と語った。
米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、今回の事態が米韓関係に重大な試練をもたらしたと評した。NYTは「韓国はアジアにおける米国の最重要同盟国の一国であり、民主主義国家としての役割を通じて地域内の権威主義的国家と対峙してきた」と分析した。同紙は、ジョー・バイデン米大統領が海外出張中というタイミングを利用し、尹大統領が戒厳令を宣言した可能性があると指摘し、そのような事態は国際情勢における民主主義陣営の混乱を招く恐れがあると警告した。
バイデン政権は昨年3月、韓国で開催された民主主義サミットで民主主義を中心とした外交政策を強調しながら、今回のような事態はこうした基本方針に反していると批判した。
また、ワシントン・ポスト(WP)は、ウクライナ戦争、ガザ地区の紛争、北朝鮮・ロシアの軍事協力など、グローバルな安全保障における脅威の中で、韓国情勢が国際社会に与える影響の大きさについて強調した。さらに「韓国の民主主義は、アジア地域の安定と繁栄において重要な軸の役割を果たしている」とし、戒厳令事態が同盟国間の信頼関係に悪影響を及ぼす可能性があるとも警告した。
特にWPは、バイデン大統領がアンゴラ訪問中であるにもかかわらず、韓国のこのような事態について即時報告を受けた点を強調し、アメリカがこれを極めて重大な事案と捉えていると報じた。
AFP通信は、尹錫悦大統領の戒厳令宣布・解除騒動が、韓国内だけでなく国際社会でも論争を巻き起こしたと伝えた。また「尹大統領の行動は、民主的規範を損なったと批判の声があがっている」とし、韓国の政治的安定性に対し疑問を投げかけたと報じた。
さらに「尹大統領の決定について、アメリカ側には事前に何の報告もなかった」とし、バイデン政権と尹錫悦政権間の緊密な意思疎通が行なわれていなかった点についても指摘した。
ドナルド・トランプ次期大統領陣営も韓国の状況に驚きを示したという。トランプ次期大統領の最側近であるイーロン・マスク政府効率化局長官指名者は「尹大統領の戒厳令宣布は衝撃的であった」と、SNS・X(エックス)を通じて短いコメントを投稿した。当投稿は、トランプ陣営も尹大統領の今回の措置を批判的に考えているということを示唆したものと捉えられる。
このように米メディアは一斉に、韓国がアジアで民主主義の象徴的役割を果たしてきたことを強調しながら、今回の戒厳事態が国際社会における韓国民主主義の信頼性を大きく損なってしまった可能性があると分析した。
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