
パク・チャヌク監督の最新作『仕方ない』(英題『No Other Choice』)が、世界の映画評論家から絶賛を浴びている。資本主義社会の雇用不安と人工知能(AI)の労働市場浸透を鋭く風刺したこのブラックコメディは、米英の主要メディアから圧倒的な称賛を受け、第82回ヴェネツィア国際映画祭の話題作に浮上した。早くも来年のアカデミー賞有力候補として注目されている。
物語は、大企業のリストラで突然解雇された主人公マンスを中心に展開する。AI技術の発達によって職を失った彼は、生き残りのために次第に極端な選択へ追い込まれていく。パク監督は特有の洗練された演出と鋭い社会的洞察をもって、現代人の不安をユーモアと緊張感の中で描き、観客に笑いと共感を同時に与える。

米映画評価サイト「ロッテントマト」によれば、1日午前8時30分現在で『仕方ない』は17媒体のレビューすべてで100点満点を記録した。これはポン・ジュノ監督『パラサイト 半地下の家族』の99点(485人集計)を上回る数値である。ただし劇場公開後にレビューが増えれば変動の可能性もある。
英BBCは「恍惚とするほど面白い韓国の傑作は今年の『パラサイト』」と題したレビューで「『オールド・ボーイ』『お嬢さん』に続き、経済的不安を扱った陰鬱かつユーモラスなコメディを披露した」と絶賛し、星5つを付けた。とりわけ雇用不安やAIの影響を普遍的課題として扱った点を評価し、「マンスの物語は我々すべての物語に拡張される」と論じた。

米「バラエティ」は「パク・チャヌクのまばゆい殺人コメディは制御された混沌を示すマスタークラス」と題した記事で「解雇の狂気を風刺したこのブラックコメディは、ベネチア映画祭コンペ部門を輝かせた」と伝えた。同誌は「彼の演出は映像美と物語的緊張感を完璧に調和させている」と評価し、「現存する最もエレガントな映画監督であることの証」とまで称した。
英「スクリーン・デイリー」は「極めて面白いと同時に、長期失業者の絶望と企業社会の不必要な残酷さを胸に迫る形で探究する」と評した。さらに「AIが労働市場を侵食する中、誰もがマンスになり得る」とし、現代社会の不確実性を鋭く捉えていると分析。「コメディと悲劇の境界を自由に行き来する」演出を高く評価した。

米「インディワイア」は「タイトル通り、ついにアカデミーはパク・チャヌクを候補にせざるを得ないかもしれない」と題した記事を掲載。「挑発的な本質を保持しながらも、過去作のように過剰な残虐性で審査員を遠ざけない」とし、「大衆性と芸術性を兼備した」と絶賛した。また「現代資本主義の矛盾を鋭く抉った点がアカデミー審査員に魅力的に映るだろう」と展望した。
作品はヴェネツィアでの上映後、観客と評論家から熱烈な反応を得た。平凡なサラリーマンから絶望へと転落するマンスを演じたイ・ビョンホンの繊細な演技が没入感を高め、AIに満ちた都市空間の舞台は観客に馴染み深さと不安を同時に与える。監督の演出は「現実と超現実の境界を絶妙に横断する」と高く評価されている。

『仕方ない』はパク監督のフィルモグラフィーの中でも独自の魅力を持つ作品とされ、特にクライマックスのある場面は「監督の天才性を再確認させる瞬間」として論評されている。マンスが自らの運命を受け入れる過程を象徴的に描き、深い余韻を残す。
総じて『仕方ない』はパク監督のキャリアにおける新たな金字塔となる可能性が高い。ヴェネツィアでの成功を足がかりにグローバル配給を控えており、北米や欧州市場でも大きな反響が期待される。パク・チャヌク監督の初オスカー候補入りを予測する声が一層高まる見込みである。
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