撮影開始のわずか10日前に男性主演俳優が急遽交代する前代未聞の事態にもかかわらず、むしろ大きな成功を収め話題の中心に立ったドラマがある。

その正体は、放送4話で視聴率11.1%を突破し、今年tvNドラマ最高記録を打ち立てた『暴君のシェフ』だ。8月23日に初放送された本作は第1話4.9%から始まり、第2話6.6%、第3話7.6%を経て第4話で二桁視聴率を達成。首都圏基準では11.4%を記録し、瞬間最高視聴率は13.6%に達した。
海外での反応はさらに熱い。Netflixでは放送直後から韓国を含む世界のNetflix TOP10シリーズ1位に登場し、2日連続で首位を守った。

話題性指標も圧倒的だ。8月第3週と第4週にかけてTV-OTT統合ドラマ話題性部門で2週連続1位を獲得。特に前週比で79.1%急増し、急激な上昇傾向を示した。主演のイム・ユナはドラマ出演者話題性部門で2週連続1位、イ・チェミンは2位となり、話題性を独占した。
ドラマ話題性ランキング全体を見ると、1位『暴君のシェフ』に続き、2位はNetflix R-19ドラマ『エマ』、3位はKBS大作『TWELVE トゥエルブ』、4位はJTBC『エスクワイア:弁護士を夢見る弁護士たち』、5位はSBS『TRY 〜僕たちは奇跡になる』、6位はJTBC『優しい男』が名を連ねた。その後に『初、恋のために』『かけがえのない私のスター』『ショーウィンドウ:女王の家』『華麗なる日々』がトップ10入りした。

本作が一層注目される理由は、制作過程で起きた予期せぬ変数にある。当初、男性主人公イホン役にはパク・ソンフンがキャスティングされていた。しかし今年1月、彼がSNSにアダルトビデオの表紙写真を投稿し削除した件が発覚して物議を醸した。制作会社と放送局は作品イメージ毀損を懸念し、協議の末パク・ソンフンの降板を決定した。
急場をしのぐ形で新人俳優イ・チェミンが主演に抜擢された。初撮影まで10日も残されていない状況だったが、結果的に作品には幸運となったとの評価だ。

『暴君のシェフ』はウェブ小説『連山郡のシェフで生き残る』を原作とする。現代のフランス帰りのシェフ、ヨン・ジヨン(イム・ユナ)が朝鮮時代にタイムスリップし、絶対味覚を持つ暴君王イホン(イ・チェミン)と出会うロマンチックコメディだ。ドラマ版では原作の燕山君を架空の人物「イホン」に置き換えることで歴史的論争を避け、自由な想像力を発揮した。
イ・チェミンのキャスティングは多方面で的中したとの分析が出ている。身長190cmの優れたスタイルと端正な容姿は時代劇の衣装によく合い、特にロマンスジャンルで言われる「大柄イケメン男主人公」の条件を完全に満たしている。母を失い復讐を誓う暴君でありながら、ジヨンの料理の前では子どものような感情を見せるキャラクターを、2000年生まれの若手俳優が演じることで説得力が増したと評価された。

イム・ユナは制作発表会で「王としての発声や作品への集中度が非常に高く、私も没入するのに大いに助けられた」とイ・チェミンを絶賛。イ・チェミンも「(イム・ユナ)先輩が一緒にシーンをする時もセリフをしっかり合わせてくれて、積極的に助けてくださったので安心して撮影できた」と応じた。
本作のもう一つの魅力は料理に対する繊細な演出だ。制作陣は「料理は単なる小道具ではなく主人公のように登場する作品」と語った。原作小説で文章のみだった料理過程を生き生きと映像化し、伝統食材を現代的に再解釈した「コチュジャンバター混ぜご飯」や「スービッドステーキ」などが視聴者の目を引いている。
イム・ユナはキャラクター完成度を高めるため、実際のシェフに助言を受けて料理練習に励んだ。「最初から最後まで体に染み込むようにある程度のスキルを身につけなければならない部分が多く、撮影前まで練習を重ねた」と作品への強い愛情を示した。
最近の放送回では2人のロマンスラインが本格的に始まり、注目を集めている。特にイホンが酔った状態でジヨンにキスする場面がエンディングを飾り、今後の展開への期待を高めた。
視聴者からは「キャスティング交代が神の一手」「イ・チェミン×イム・ユナ、年の差カップルのケミが最高」「二人とも人生キャラクターを更新した」「演技がうまくて面白い」「毎回王様のモッパンが最高」「あまりに面白いので30部作で作ってほしい」など熱い反応が寄せられている。突然の主演交代が逆にドラマの完成度を高め、話題性を押し上げたという評価の中で、今後の興行成績にも期待が高まっている。
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