第82回ベネチア国際映画祭で、パク・チャヌク監督の新作『どうしようもない』は受賞には至らなかった。最高賞の黄金獅子賞はジム・ジャームッシュ監督の『Father Mother Sister Brother』が手にした。

7日(日本時間)午前の閉幕式後、パク監督は配給会社CJ ENMを通じて「これまで作ったどの映画より観客の反応が良かった。すでに大きな賞をもらった気分だ」とコメント。『どうしようもない』は先月末の公式上映で約9分間のスタンディングオベーションを受け、映画祭公式デイリー採点でも3.7点を記録するなど有力候補と目されたが、トロフィー獲得には届かなかった。
今年のベネチアを制したのはジャームッシュ監督だった。家族をテーマに米国・アイルランド・フランスを舞台にしたオムニバス作品『Father Mother Sister Brother』が黄金獅子賞を獲得。監督は授賞式でユーモアを交えたスピーチを行い、会場を沸かせた。
審査員大賞はガザ空爆で命を落とした6歳少女ヒンド・ラジャブとその家族、救助隊員の悲劇を描いた『The Voice of Hind Rajab』が受賞。同作は公式上映で23分に及ぶスタンディングオベーションを受け、大きな話題を呼んでいた。
銀獅子賞(監督賞)は米映画『The Smashing Machine』のベニー・サフディ監督が受賞。イタリアのジャンフランコ・ロージ監督は『Below the Clouds』で審査員特別賞に輝いた。演技賞であるボルピ杯は、中国のシン・ジーレイが『The Sun Rises on Us All』で主演女優賞、イタリアの俳優トニ・セルヴィッロがオープニング作品『La Grazia(恩寵)』で主演男優賞をそれぞれ受賞した。

『どうしようもない』はキム・ギドク監督の『ピエタ』(2012)以来13年ぶりに韓国映画としてベネチアのコンペ部門に出品され、国内外の注目を集めた。海外メディアも高評価を送り、一部は「批評家と観客が一致して称賛した作品」と伝えていた。惜しくも無冠に終わったが、海外販売だけで制作費170億ウォン(約18億円)をすでに回収しており、来年の第98回アカデミー賞国際長編映画部門の韓国代表作品にも選出され、引き続き興行と受賞レースを展開する。韓国での公開は今月24日に決定している。
物語は、突然解雇された父親が妻と2人の子ども、そして苦労して手に入れた家を守るために再就職を目指して奮闘する姿を描く。主演はイ・ビョンホンとソン・イェジン。パク監督にとって12本目の長編であり、原作小説『The Ax』の映画化を17年間準備した末に完成させた。ベネチア競争部門に出品するのは『親切なクムジャさん』(2005)以来20年ぶり。過去にはカンヌ国際映画祭で『オールド・ボーイ』(審査員大賞)、『渇き』(審査員賞)、『別れる決心』(監督賞)で受賞歴を持つ。
韓国映画はこれまでベネチアで存在感を示してきた。故カン・スヨンが『シバジ』(1987)で主演女優賞(ボルピ杯)を受賞、イ・チャンドン監督は『オアシス』(2002)で監督賞(銀獅子賞)、主演のムン・ソリはマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞した。キム・ギドク監督は『うつせみ』(2004)で監督賞(銀獅子賞)、『ピエタ』(2012)で韓国映画として初の黄金獅子賞を受賞している。今回『どうしようもない』はトロフィー獲得は逃したものの、現地での熱い反応と確かな成果によって、次の舞台への期待を膨らませた。
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