米国の時事週刊誌『TIME』が2025年に放送・配信が行われた作品を対象に「今年のベスト韓国ドラマ10本」を発表した。世界的ヒット作が上位を占めるとの見方もあったが、結果は意外なものとなった。ネットフリックスの代表作『イカゲーム』シーズン3が3位にとどまる一方、1位には異なる方向性の作品が選ばれている。

今回のリストが注目される理由は「話題性」ではなく「完成度」を基準に並べられている点にある。大規模フランチャイズ作品が後退し、感情の積み重ねやキャラクター重視の作品が評価を伸ばした。結論として、今年最も多く語られた作品ではなく最後まで説得力をもって描き切った作品が上位に位置づけられた。
1位『おつかれさま』
TIMEが1位に選んだのはネットフリックスオリジナルの『おつかれさま』だ。1950年代の韓国・済州島(チェジュド)に生まれたエスンとグァンシクの人生を四季になぞらえて描き、巨大な事件よりも人物の選択と感情の流れで物語を前に進めた点が高く評価された。
本作は全16話構成で3月7日から28日にかけて配信された

時代劇という枠を背景の質感として溶かし込み、キャラクタードラマの力で感情を最後まで引っ張り切った点が特徴とされる。IU、パク・ボゴム、ムン・ソリ、パク・ヘジュンらのキャスティングが話題を呼んだが最終的には物語全体のバランス感覚が1位の説得力を生んだと分析されている。
2位『私が死ぬ一週間前』
2位に選ばれたのは『私が死ぬ一週間前』だ。大きな興行的成功を前面に出した作品ではないが、TIMEは全6話という短い構成の中で感情を高密度に積み上げた点に注目した。
絶望の中にいる女性の前に高校時代に亡くなった初恋の相手が死神として現れるという設定はファンタジー色が強いが、物語の核は「回復」にある。ロマンスを土台にしながら最終的には人の心を正面から描いた点が高評価につながった。

3位『イカゲーム』シーズン3
3位は6月27日に配信された『イカゲーム』シーズン3が入った。主人公ソン・ギフンとフロントマンの対立を本格的に前面化し単なる生存競争を超えて「人間性とは何か」を問いかける物語を展開した。
TIMEはクライマックスに対する物足りなさを指摘しつつも、資本主義社会の絶望を描く姿勢は最後まで貫かれていたと評価している。

総じて今回の順位は「誰がより大きく作ったか」ではなく「誰がより長く心に残ったか」を示したリストだといえる。超大型フランチャイズである『イカゲーム』シーズン3が3位に位置した事実自体がそのメッセージを明確にしている。話題性はもはや前提条件となり、1年を代表する資格は「完走力」と「物語の密度」で測られる段階に入ったという見方だ。
1位に輝いた『おつかれさま』は大事件に頼らず人物の選択と感情のみで16話を支え切る力を示し、2位の『私が死ぬ一週間前』は短編構成の中に感情を凝縮して余韻を残した。一方『イカゲーム』シーズン3は巨大ブランドの最終章という重圧の中でも鋭い問いを投げかけ続けたが、最後の盛り上がりの部分で評価が分かれたとの解釈も成り立つ。

TIMEの選択は「今年、韓国ドラマがどこまで到達したのか」を示す指標に近い。世界が注目する大作が上位を独占する時代を経て、今は一つの作品がどれほど繊細に時代と人間を捉え切れるかが順位を左右する段階にある。そうした流れを踏まえるとベスト10の残る7作品がどのような基準で選ばれたのかにも関心が高まる。今年のKドラマは、スケールよりも密度で勝負する段階に確実に入ったと受け止められている。
米TIME選定「2025年ベスト韓国ドラマ10選」
10位 ネットフリックス『トリガー』
9位 TVING『スピリット・フィンガース』
8位 JTBC『オク氏夫人伝~偽りの身分真実の人生~』
7位 TVING『スタディーグループ』
6位 tvN『いつかは賢いレジデント生活』
5位 JTBC『未知のソウル』
4位 ディズニープラス『北極星』
3位 ネットフリックス『イカゲーム3』
2位 TVING『私が死ぬ一週間前』
1位 ネットフリックス『おつかれさま』
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