批評家の評価は低迷しているものの、観客の支持は圧倒的だった。故マイケル・ジャクソンの人生と音楽を描いた伝記映画『Michael/マイケル』が、世界興収で9億7,700万ドル(約1,582億円)を突破し、伝記映画として歴代最高興収を記録した。

『Michael/マイケル』は、「キング・オブ・ポップ」と呼ばれたマイケル・ジャクソンの歩みを描いた作品だ。公開後は批評家の評価が分かれた一方で、観客の支持を集め、世界各地の劇場で動員を伸ばしている。
映画興収集計サイトBox Office Mojoなどによると、『Michael/マイケル』の世界興収は先週末までに9億7,700万ドルに達した。これにより、これまで伝記映画の歴代興収1位だったクリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』(9億7,500万ドル)をわずかに上回った。

『Michael/マイケル』は、クイーンのボーカル、フレディ・マーキュリーの生涯を描いた『ボヘミアン・ラプソディ』(9億1,100万ドル)の記録もすでに超えており、音楽家を描いた伝記映画としても歴代最高の興収を記録している。
今年公開された作品の中でも、同作は世界興収ランキングで上位に入っている。日本を含むアジア市場でも動員を伸ばしており、現在の勢いが続けば、伝記映画として初めて10億ドルの大台に届く可能性もある。
マイケル・ジャクソンの影響力は、没後も衰えていない。米経済誌Forbesによると、2009年に亡くなって以降、マイケル・ジャクソン関連の没後収入は昨年までに35億ドル(約5,670億円)に達した。過去25年間に亡くなった文化、芸術、スポーツ界の著名人の中でも、累計の没後収入は群を抜いている。
『ボヘミアン・ラプソディ』の製作陣が「キング・オブ・ポップ」を描いた
『Michael/マイケル』は、マイケル・ジャクソンの音楽的な原点から全盛期までを中心に描いている。物語は、1960年代に兄弟たちと結成したジャクソン5時代から始まり、世界的名盤『スリラー』、さらに1980年代後半の「Bad」ワールドツアーへと進んでいく。

製作には、『ボヘミアン・ラプソディ』を手がけたスタッフも参加した。映画は、幼い頃から圧倒的な才能とスター性で注目を浴びたマイケル・ジャクソンの華やかな成功を追いながら、家族への責任感や、自らの音楽を追い求める中で抱えた葛藤にも目を向けている。
ステージ演出の再現にも力が入っている。天才少年として注目された時代から、世界的なポップアイコンへと上り詰めるまでの過程を、大規模なライブシーンとともに描いた点が、多くの観客を引きつけている。
ただ、興行面の成功とは対照的に、批評家の評価は厳しい。映画批評サイトRotten Tomatoesでは、観客スコアが97%を記録した一方、批評家スコアは38%にとどまった。Metacriticでも批評家の平均スコアは39点で、専門家の評価は伸び悩んでいる。
批評家からは、マイケル・ジャクソンの複雑な人生を表面的に描いているとの指摘が出ている。広く知られたステージやパフォーマンスの再現に力を注ぐ一方で、人物の内面や後年の論争への踏み込みが足りないという見方だ。
成功への強いこだわりや完璧主義、独特の芸術性がどのように形作られたのかについても、十分に掘り下げられていないとの声がある。父ジョー・ジャクソンとの関係に多くを負わせすぎているという批判もあり、2時間を超える上映時間の中で数多くの出来事を詰め込んだことで、物語が駆け足になったとの指摘も出ている。
甥のジャファー・ジャクソンが高い再現度で観客を引き込んだ
一方で、一般の観客やマイケル・ジャクソンのファンからは高い支持を得ている。華やかなステージ再現や楽曲の力、主演を務めたジャファー・ジャクソンの存在感が、商業映画としての満足度につながったとみられる。

製作陣は、ジャファーのボーカルにマイケル本人の原曲音源を重ねるなど、音響面にもこだわった。ジャファー自身も、幼い頃に見ていた叔父の身ぶりや癖を役作りに取り入れ、関連資料や評伝を読み込みながら、約2年にわたって歌やダンス、ステージ上の動きを鍛えたという。
批評家の評価は割れているが、『Michael/マイケル』は観客の強い支持を背景に、世界興収で記録を塗り替えた。マイケル・ジャクソンという存在が、没後もなお世界の大衆文化に大きな影響を及ぼしていることを示す結果となっている。
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