初動は振るわなかった韓国映画が、口コミ効果で劇場で驚きの巻き返しを見せている。20日の映画館入場券統合電算網(観客数をリアルタイムで集計する統合システム)によると、この作品は韓国映画予約率1位となり、『F1®/エフワン』や『ゾンビ娘(韓国語原題訳)』といった強豪を抑え、上昇基調を続けている。

この逆転の主役は、13日に公開された映画『悪魔が引っ越してきた(韓国語原題訳)』だ。イム・ユナとアン・ボヒョンが主演を務め、夜明けごとに悪魔へと変貌する女性スンジ(少女時代ユナ)を監視する奇妙なアルバイトに巻き込まれる無職青年ギルグ(アン・ボヒョン)の奮闘を描いたオカルト・ロマンティックコメディである。
特に、観客動員942万人を記録した映画『EXIT イグジット』のイ・サングン監督がメガホンを取ったことで、公開前から「1,000万人突破の有力候補」として注目を集めた。前作の成功を背景に、業界でも大ヒットの可能性が語られていた。

しかし公開後は予想外の展開となった。初日の観客は4万8,561人でボックスオフィス2位に入ったものの、その後は下落基調が続き、成績は伸び悩んだ。累計は約30万630人にとどまり、損益分岐点とされる約170万人には遠く及ばない状況だ。
それでも観客の評価は予想以上に好意的だった。ネイバー(NAVER、韓国最大のポータルサイト)の実観客スコアは7.07点、ロッテシネマ8.7点、メガボックス7.9点、CGVのゴールデンエッグ指数は87%と、各プラットフォームで中上位の評価を獲得。観客はコメディ要素や俳優陣の相性を高く評価し、口コミで評判が広がっている。
こうした支持を背景に、公開から7日目の20日には韓国映画予約率1位に浮上。特にハリウッド大作『F1®/エフワン』や、圧倒的な動員を誇る『ゾンビ娘』を抑えて総合予約率2位、韓国映画1位を記録した点は大きな意味を持つ。

主演のイム・ユナ(少女時代ユナ)は公開直後のインタビューで、「私の初主演映画は『EXIT イグジット』で、イ・サングン監督にとっても長編デビュー作だった。このデビュー作が多くの愛を受けたことで、次回作の準備では監督と共感を深め、支え合いながら作ることができた」と語った。
さらに「監督が込めた真心、昼のスンジとして、夜のスンジとして見せる姿がきちんと伝わればうれしい。観客数も桁が一つ上がるたびに喜びを感じる」と興行への期待を示した。
イ・サングン監督は前作『EXIT イグジット』が1,000万人に届かなかったことについて「むしろ良かった。目標に届かなかったからこそ奮起し、新作に取り組むことができた」と自信をのぞかせた。
観客の反応もさまざまだ。ある観客は「コメディ演技がとても上手で家族で楽しめた」と評価し、別の観客は「ユナの演技が本当に良かった。ギルグというキャラクターも非常に魅力的で、映画ならではの人物像に心が温まった」と語った。
一方で「『EXIT イグジット』と同じ監督の作品とは思えない」「見ている間ずっと眠ってしまった。無理やりな内容」といった否定的な意見もあり、評価は分かれている。

それでも全体としては「期待せずに観たが良かった」「笑えるコメディかと思いきや余韻が強い」「癒やされ、励まされる映画」といった肯定的な声が多く、口コミ効果が現れている。
1,000万人規模のヒットが期待された作品が一時は不振に沈みながらも、再び予約率1位へと返り咲いた『悪魔が引っ越してきた』が、この先も巻き返しを続けられるのか注目される。
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