2006年の公開当時は「中年男性の物語」と受け止められ、静かな口コミで評価を広げていった一本の映画が約20年の時を経て再び脚光を浴びている。
最近ではネットフリックスの韓国国内TOP10にランクインし、若い視聴者層にも視聴の輪を広げている。その背景には俳優アン・ソンギの訃報がある。アン・ソンギの代表作として知られるこの作品があらためて注目され、過去の映画が「現在形のコンテンツ」として再評価されている形だ。

話題となっているのは映画『ラジオスター』だ。イ・ジュニク監督が手がけ、パク・ジュンフンとアン・ソンギが主演を務めた作品である。かつて一世を風靡したロック歌手チェゴンと彼を長年支えてきたマネージャーのパク・ミンスが地方都市のラジオ局で番組を担当することになり、そこで起こる出来事を描いている。華やかさを失った場所で人と人との温もりを見つけていく過程が物語の軸となっており、大きな事件よりも日常の感情の変化に重きを置いた構成が特徴だ。
アン・ソンギが演じたパク・ミンスは本作の感情的な中心を担う存在である。成功よりも義理を金よりも人を大切にする人物として、劇中ではチェゴンを最後まで支え続ける。多くを語らず、行動で信頼を示す演技はアン・ソンギという俳優のイメージと重なり、この作品が彼の代表作として語り継がれる理由の一つとなっている。
興行成績は爆発的とは言えないものの、意味のある数字を残した。『ラジオスター』は韓国で約180万人以上を動員し損益分岐点を超えたとされている。NAVER映画の観客評価は9.2点だ。比較的低予算で制作された作品であり、大作とは異なる「堅実なヒット例」として評価された。公開当時は家族層や中高年層から特に厚い支持を受けた。

本作の魅力は刺激的な設定ではなく「共感」にあった。忘れられたスターという設定は誰にでも重ねやすく、人生の下り坂で再び笑顔を取り戻していく過程は世代や性別を問わず響いた。そこにラジオというメディアが持つアナログな情緒が加わり、消費の早い物語とは異なる没入感を生み出している。
音楽の使い方も重要な要素となっている。ロック音楽とラジオへの投稿が物語に溶け込み、チェ・ゴンという人物の過去と現在を自然につないでいる。派手なOSTではなく、場面と感情に寄り添った選曲が中心で作品全体のリアリティを高めていた。
近年ネットフリックスを通じて再注目されている現象は単なる思い出の呼び起こしにとどまらない。アン・ソンギの訃報をきっかけに彼のフィルモグラフィーを見返す流れの中で『ラジオスター』は真っ先に選ばれる作品となった。誇張のない演技、人間味あるキャラクター、そして今見ても色あせないメッセージ性が現在の視聴環境でも十分に通用するとの評価が広がっている。

若い世代からは「最近の映画よりも正直に感じる」といった声も上がる。テンポの速さや強い刺激に慣れた世代にとって、かえって新鮮に映るというのだ。これは『ラジオスター』が単なる過去の名作ではなく時代を超えて消費され得る作品であることを示している。
『ラジオスター』の再評価は一人の俳優の訃報を超え、韓国映画が持つ持続性を語る事例ともなっている。アン・ソンギが残した演技はいまもスクリーンの中で生き続け、アン・ソンギが演じたパク・ミンスという人物は今も誰かの人生に静かに語りかけている。ネットフリックスTOP10という現在の結果は『ラジオスター』がなお有効であることを示す、最も分かりやすい証と言えるだろう。
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