
韓国の全羅南道・順天市のとあるアパート団地周辺に、角のある野生の鹿が群れで出没したということが明らかになった。不安を訴える住民がいる一方で、鹿を歓迎する住民もいると伝えられた。
韓国・JTBCの報道によると、順天市・龍塘洞のとあるアパート団地で、烽火山から下りてきたとみられる鹿が散策路や公園で頻繁に目撃されているという。
烽火山一帯で鹿の個体数が増えたのは、約20年前に某鹿農場から脱走した4頭の鹿が繁殖したためだといわれている。順天市は現在、鹿の個体数が約70頭にまで増加したと推定している。住民のキムさんは「10年前はたまに1~2頭目撃する程度だったが、今では繁殖を重ねたせいか頻繁に見かけるようになった」と語った。
鹿が市街地にまで姿を現す理由は、餌を探すためである。一部の住民が管理している家庭菜園では、白菜が食べられた跡も見つかっているという。家庭菜園の管理者であるコさんは「隙さえあれば鹿が入り込んでくる」と説明した。また「イノシシも1頭見かけるが、鹿とは争わないようだ」と付け加えた。
鹿に対する住民の反応は分かれている。一部の住民は「つぶらな瞳が優しそうに見える」と好意的な反応を示しているという。また、ある住民は「都市の中で鹿と共に暮らせるなんて素晴らしいことだ」と語った。
子どもたちは鹿を珍しがり、概ね歓迎しているという。4歳のユン君は「山で鹿を見たことがある。角がとても大きくて、4頭いた」と話した。6歳のソンちゃんは「サンタさんが乗るルドルフの鹿じゃなくて、鼻が黒かった」と鹿を目撃した様子について語った。また、住民のユンさんは「絵本で見ていた動物を実際に目の当たりにすると、まったく違う感じがする」と興味深そうに話した。
しかし、烽火山の近くにはアパート団地だけでなく保育園もあるため、一部の住民は安全面への懸念を示している。鹿の個体数の増加により、不便を感じる住民もいるのだ。
全南・野生動物救護管理センターのチャ・インファン博士は「鹿の繁殖期は9月から11月の間で、この時期には角を使って縄張り争いをすることもある」と説明した。
鹿は攻撃性が低い動物として知られているが、予期せぬ事態が発生する可能性もある。実際、昨年11月には京畿道・水原市の光教山で、鹿の角によって市民2人が負傷するという事故も発生したのだ。
鹿は捕獲することができない。イノシシとは異なり、現行法上は家畜に分類されるため、専門の狩猟者が捕獲することはできないのだ。そのため順天市は環境省に対し、鹿を法定管理動物に指定するよう要請しているという。
順天市役所の動物資源課関係者は「法定管理動物に指定された場合、捕獲後に去勢手術などの措置を講じることができる」と説明した。環境省の生物多様性課関係者は「野生動物の保護と生命・財産への被害防止の間でバランスを取ることが重要だ」と述べた。
JTBCは、野生の鹿が市街地に定着する中で不安と歓迎の声が交錯していると報じ、人と鹿が共存する方法を模索する必要があると指摘した。
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