北朝鮮が金剛山観光地区内の韓国側の施設である離散家族面会所を撤去中であることが明らかになった。これに対し、韓国政府は即座に撤去中止を求め、財産権侵害に対する責任を追及すると表明したという。

韓国統一部は、13日「韓国と北朝鮮が合意の上で設置した金剛山の離散家族面会所を北朝鮮が一方的に撤去していることに強い遺憾の意を表明する。即刻中止することを厳重に求める」と述べた。また、「離散家族面会所の撤去は離散家族の希望を踏みにじる反人道的行為であり、韓国の国有財産に対する重大な侵害行為である」と強調した。
韓国政府は今回の事態に対し、法的措置や国際社会との協力などを検討中であるという。韓国統一部の関係者は「過去にも開城南北共同連絡事務所の爆破に対して損害賠償訴訟を提起したように、今回の件に対しても時間をかけてでも必ず責任を追及するつもりである」と述べた。

離散家族面会所は昨年4月に撤去された消防署の建物以降、金剛山観光地区内に残されている唯一の韓国政府所有の建物である。現在、外壁タイルの撤去が進められており、建物の両側にある付属建物の壁体撤去も始められているという。北朝鮮は2019年、金正恩国務委員長が金剛山観光地区を視察後「以前、南側と協力の下建てた金剛山施設をすべて撤去し、新たに建設するべきだ」と指示していたことが明らかにされた。
離散家族面会所は2003年の南北赤十字会談で建設合意が行われ、2005年に着工、2008年7月に完成した。江原道・高城郡・温井里・潮浦村の観光特区内に位置しており、敷地面積は1万5000坪、延床面積は6000坪規模で建設された。本館は地下1階から地上12階までで、南北それぞれ1棟ずつの面会事務所と警備室なども設けられている。総額550億ウォン(約60億円)の南北協力基金が投じられ、韓国統一部が運営を担当しているという。
しかし、完成直後に発生したパク・ワンジャ氏射殺事件により、面会所は1年余り使用されていなかった。パク・ワンジャ氏は2008年7月11日、金剛山を観光中に北朝鮮哨兵の銃撃により死亡した。事件発生時、パク氏は午前4時50分頃に観光地区を散歩していたとされており、北朝鮮哨兵が発射した銃弾により即死したと伝えられた。北朝鮮はこれに対する公式的な表明を示さず、この事件をきっかけに金剛山観光は全面中断された。
その後、離散家族面会所は2009年9月の秋夕(チュソク)を機に行われた離散家族団体再会行事を通じて初めて運営されるようになったという。それ以降、2010年10月、2014年2月、2015年10月、2018年8月という風に合計5回利用したが、再会行事期間を除いては事実上放置状態であったことが伝えられている。
北朝鮮は2010年4月に面会施設の利用を凍結し、押収すると発表し、2011年8月には金剛山地区に残っている現代峨山の担当者たちを全員撤収させた。しかし、2018年9月の平壌共同宣言で南北は面会所を早急に開所し復旧するという内容を合意した。ところが、2019年10月に北朝鮮が「金剛山地区施設撤去」を通告し、2020年1月には撤去計画を当分の間延期すると発表したが、結局は実行することとなったのだ。
現在、金剛山観光地区にあったゴルフ場など、韓国側が建設した施設もほぼすべて撤去された状態だという。韓国統一部の関係者は「金剛山地区内の施設のうち、最後に撤去されたのが面会所である」とし「今後も北朝鮮による財産権侵害行為に対し、厳格な対応を行う予定である」と発表した。
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