
頭の中が複雑で、なぜか考えが絡み合う日には、理由もなく不快な映画に惹かれることがある。残酷なシーン以上に恐ろしいのは「平凡さの中の不快感」かもしれない。観た後、何かが心に引っかかり、忘れようとしても何度も思い出される物語たのようなモヤモヤ感で眠れなくなる5つの映画作品を紹介する。

『関心領域』(The Zone of Interest・2023年作)
アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所の隣、塀を挟んで暮らす家族の日常。カメラは決してその内部を映さず、代わりに塀の向こう側から聞こえる叫び、漂う煙、そして何事もなさそうに庭の手入れをする家族の姿が交錯する。全てのシーンが静かであるにもかかわらず息苦しさを感じるのは、その平穏の裏に隠された現実のためだ。人間がいかに残酷さに慣れやすいのかを示す映画で、見えない暴力がむしろ一層強く迫ってくる。

『オールド・ボーイ』(Oldboy・2003年作)
理由もなく15年間監禁された男。彼が世の中に出て復讐を始めると、物語は予想外の方向へ進む。真実が明らかになるにつれて、暴力以上に残酷なのは人間の本能であると気付かされる。誰もが完全な被害者でも加害者でもない世界で残るのは、説明のつかない不快感だけである。

『ミッドサマー』(Midsommar・2019年作)
眩い日差し、華やかな花畑、笑い声が溢れる祭り。しかし、その明るさが却って恐怖へと変わる。恐怖を闇ではなく「真昼の日差し」から引き出す映画で、温かみあるはずの色彩が次第に冷たくなり、人間関係は徐々に崩壊していく。残酷なシーン以上に恐ろしいのは、その中で皆が心から幸福そうに見えるという事実である。

『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(The Killing of a Sacred Deer・2017年作)
完璧な生活を送っていた外科医スティーブンの前に、正体不明の少年が現れる。そこから全てが徐々に歪み始める。理由も論理もなく起こる出来事が、観客の不安を極限まで煽る。映画は説明を拒み、代わりに不快な沈黙と空気を残す。エンディングクレジットが流れても、不思議と心拍は落ち着かない。

『ブルータリスト』(The Brutalist・2024年作)
戦争の傷を背負ったユダヤ人建築家が、アメリカで新たな生活を始める。成功と欲望、華やかなパーティー、そして冷笑的な人間関係の中で、彼の感情は次第に枯渇していく。残酷なシーン一つもなくとも、観る者に不快感を与えるのは、その虚無感があまりにも現実的であるからだ。「成功」という言葉の裏に隠された人間の欠乏を冷徹に曝し、徐々に心を蝕む。
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